有機ELデバイスの動作とイオン化ポテンシャル
Fig.1(a)は有機EL素子の断面図です。
有機EL材料が、金属陰極と、ITO透明陽極とで挟まれています。
これらは、ナノメートルオーダーの厚さで、ガラス基板上に積層製膜されています。
ここで有機EL材料は「電流が流れると光る」特殊な有機材料です。
電流が流れると光る現象はElectro Luminescence (EL)と呼ばれます。
ITOは、透明導電性材料とよばれる電流が流れるガラスのように透明な材料の一種です。インジウム(Indium)と錫(Tin)の酸化物(Oxide)なのでITOと呼ばれます。
有機EL素子の陽極に+、陰極に-の電圧をかけます。
すると電子は金属製の陰極から有機層へ注入されます。
一方、ITOでできた陽極からはホールが有機層へ注入されます。
有機層の内部で電子とホールが再結合すると光が発生します。
ここでITO電極から有機層へのホールの注入について考えてみましょう。
Fig.1(b)はITOと有機層の界面のエネルギーダイヤグラムです。
ITOのフェルミ準位付近のホールが有機層のHOMOレベルへ注入されます。
ITOのフェルミ準位と有機材料のHOMOのエネルギー差は、ホール注入時の注入障壁となります。
これはITOの仕事関数と有機材料のイオン化ポテンシャルとの差に相当します。
従って、材料の仕事関数やイオン化ポテンシャルを見積ることは、有機EL素子の設計の際に大変重要です。
(a)有機EL素子の断面図
(b)ITOと有機層の界面の
エネルギーダイヤグラム
Fig.1